音声文字起こしとは、話された言葉を文章にするとどう見えるかを示すものです。基本は、左側にタイムスタンプ、話者の発話ごとに一つのブロック、声が変わる箇所に話者ラベルという構成です。一般的な形式には、フィラーを除く整文と、「えー」や言い直しもすべて残す逐語録があります。
ここまでは多くの解説に共通しています。しかし、見本の元になった音声まで実際に聞けるページはほとんどありません。
これは想像以上に重要です。スタジオで明瞭に録った発話と、テーブル中央の1本のマイクで4人を録った音声では、文字起こしの見た目がまるで違います。そこで以下では、会議、インタビュー、留守番電話という3つの実音源を掲載し、再生位置に合わせて実際の出力を単語単位で追えるようにしました。再入力や整文はしていません。
会議音声には人が作成した正解データが公開されているため、後半では自動出力と比較して正確な誤り率も示します。
例1:3人の会議を離れた1本のマイクで収録
再生すると、発話中の単語がハイライトされ、声が変わると話者ラベルも切り替わります。
これは意図的に選んだ難しい例です。マイクは各人の襟元ではなく、テーブル中央に置かれています。3人の声を離れた場所から室内音ごと拾い、互いの発話も重なります。
実際の会議文字起こしとして、次の点に注目してください。
遠距離マイクの音声に対する自動文字起こしの弱点は、こうした短い発話に表れます。後ほど数値でも確認します。
例2:マイクが近いインタビュー
処理系は同じでも、読みやすさはまったく違います。話者は一人ずつ話し、マイクが口元に近く、発話の重なりもありません。文がまとまって認識され、話者が間を置いた場所に自然な句読点が入ります。
会議例と比べると、文字起こし精度について最も重要なことが分かります。結果を決めるのは録音です。 ツールの設定を変えるより、ラベリアマイクやヘッドセットを使う方が大きな改善につながります。
例3:一人で話す16秒の留守番電話
短い一人語りは最も処理しやすく、文字起こしの基本形もよく分かります。声が一つなので話者ラベルはなく、新しい文のまとまりが始まる箇所だけにタイムスタンプが付きます。
ボイスメモ、講義録音、音声入力したメモなど、日常的なファイルの多くはこの形です。時刻の列と文章の列だけで構成されます。
整文と逐語録の違い
どちらも同じ音声を記録しますが、省く内容が異なります。
逐語録は、引用されたくないような言い直しも含め、話した内容をすべて残します。
```
0:08 I had to figure out how to how to do the same thing for the
summary, that's how I see it.
```
「how to how to」の重複は認識ミスではなく、話者が実際に繰り返したものです。
整文では、意味を変えずに重複、フィラー、言い直しを除きます。
```
0:08 I had to figure out how to do the same thing for the summary.
```
どちらを選ぶかは用途で決まります。
| 用途 | 形式 | 理由 || --- | --- | --- || 質的調査、法務、医療 | 逐語録 | ためらいや繰り返しもデータになる || 会議メモ、社内記録 | 整文 | 自分の言いよどみまで読み返す必要がない || 公開記事、字幕、マーケティング | 整文後に編集 | 読みやすさを優先する || 言語・音声研究 | 逐語録+非発話の注記 | `[間]`、`[笑い]`、`[聞き取れず]`も記録する |実用的な原則は、まず逐語録を作り、そのコピーを整えることです。逐語から整文へは数分で変更できますが、整文から逐語へ戻すには音声全体を聞き直す必要があります。
複数話者の書式
複数人が話す場合は、誰の発言かを示します。標準的なレイアウトは、発話ごとに一つのブロックを作り、左または上にラベルを置く形です。
```
Speaker 1 So did you have to write it in the way that they wrote it,
is that what you did?
Speaker 2 Yeah, just search for specific string.
Speaker 1 Fish the data, I was just thinking that, yeah.
```
会議例にも見られる、守るべき3つの慣例があります。
1. 二人の発話を一つのブロックへまとめない。 複数の声が混じった段落は、引用、コーディング、検索のいずれにも使いにくくなります。
2. 行ごとではなく話者が変わる箇所にラベルを付ける。 6行続けて同じ「話者1」を繰り返すと、機械的で読みにくい文書になります。
3. 最後に一度だけ話者名を変更する。 自動処理は`話者1`、`話者2`を出力します。全文が確定してから実名へ一括変更すれば、数分で終わります。
動画の文字起こしはどう見える?
動画の文字起こしも、処理するのは音声トラックです。映像は文章へ直接影響しません。違いは、その後タイムスタンプをどう使うかです。
同じファイルから両方を作れます。SRTへの書き出しは新たな文字起こしではなく、形式変換です。字幕が必要なら、先に全文を文字起こしし、その後で字幕単位へ分割します。
公表されない精度の実態
文字起こし見本の多くは、この段階で役に立たなくなります。SpeakWriteは「99〜100%」、TranscribeMeは「99%以上」としていますが、測定に使った音声や正解データを公開していません。そのため再検証も相互比較もできません。
上の会議はAMIコーパスに人が作成した正解データがあるため、同じ48秒間を比較できます。
| | 人による正解データ | 自動文字起こし || --- | --- | --- || 単語数 | 208 | 163 || 発話/セグメント数 | 20 | 10 || 話者数 | 3 | 2 || 短い相づち(「okay」「right」「mm-hmm」) | 7 | 2 |この区間の単語誤り率は30.8%でした。内訳は置換41、削除17、挿入6です。
35分の会議全体には、比較可能な45秒区間が17あります。その誤り率の中央値は36.8%、最良の区間は15.5%でした。
この数字から分かることが三つ、分からないことが一つあります。
離れたマイクで収録した会議音声は本当に難しい。 テーブル中央の1本のマイク、3人、重なる発話という条件は、現実的な録音の中でも特に厳しく、「99%」から遠い数字になるのは当然です。
誤りが集中する場所が分かる。 室内には3人いますが、検出された話者は2人です。3人目は「okay」「yeah」「mm-hmm」のような短い相づちが中心で、7件のうち5件が完全に抜けました。誤りは均等に広がらず、短い発話や小さな声へ集中します。
最初に改善すべき点が分かる。 この録音で30%の差を埋めるソフトウェア設定はありません。話者ごとにマイクを用意する方が有効です。
手元のファイルの誤り率までは分からない。 例2のインタビューは同じ処理系でも、マイクが近いため文章として自然に読めます。こちらが通常の条件で、会議例は負荷試験です。
手元の音声を文字起こしする手順
1. できるだけ口元の近くで録音します。 20ポンド程度のラベリアマイクでも、ソフトウェア設定以上の効果があります。
2. 言語が分かっている場合は、冒頭数秒だけに推測させず、言語を指定します。
3. 複数の声が入る場合は、処理後ではなく文字起こし前に話者分離を有効にします。
4. 逐語か整文かを先に決めます。 ためらいが重要なら逐語、不要なら整文を選びます。
5. 冒頭1分を音声と照合します。 固有名詞、専門用語、略語に誤りが集中しやすいため、手作業で確認します。
音声をテキストへ文字起こししたり、MP4を文字起こししたりできます。いずれも話者ラベルとタイムスタンプに対応し、字幕が必要ならSRTで書き出せます。
よくある質問
音声文字起こしはどのような見た目ですか?
タイムスタンプの列と文章の列があり、話者の発話ごとにブロックを分け、声が変わる箇所に話者ラベルを付けます。一人語りではラベルを省き、複数話者では残します。
整文と逐語録の違いは?
逐語録は「えー」、繰り返し、言い直しも含め、実際に話された語をすべて残します。整文は意味を変えずにそれらを除きます。研究や法務では逐語が必要なことが多く、会議メモでは通常、整文の方が読みやすくなります。
自動文字起こしの精度は?
ソフトウェアより録音条件に大きく左右されます。上の遠距離マイクの会議では、人による正解データに対する誤り率が30.8%でした。一方、マイクが近いインタビューでは、固有名詞や専門用語を時折修正する程度で自然に読めます。元音声を示さない単一の精度表示は、比較材料ではなく宣伝として扱うべきです。
文字起こしには話者名も入りますか?
音声の中に氏名を特定する情報はないため、自動処理は`話者1`、`話者2`のような一般ラベルを出力します。全文が確定した後、人が一括変更するのが効率的です。
動画も文字起こしできますか?
はい。動画の音声トラックだけを使うため、音声と同じ方法で文字起こしできます。同じファイルから字幕形式も書き出せます。